投球障害肩の予防を考える上で重要なことは発症前の肩関節の状態を知ることだと思います。
通常の医療機関では選手は発症した後に受診するため、どうしても発症に対して後ろ向き研究になってしまうことが多いです。
一方、筑波大学はMRIや動作分析システムがスポーツ現場に設置されているため、発症に対して前向きに研究することに適した施設です。
前向き研究では、後ろ向き研究と比べ、高いエビデンスレベルを獲得できます。
本研究の目的は無症候期の大学野球選手の肩関節にはどのような所見が認められるかを調査することです。
対象は大学野球選手48名です。
被験者はいずれも無症状の選手です。
上記プロトコールにしたがって、両肩のMRIを撮影し、その有病率、所見の分布、所見のパターンについて調査しました。
投球側の上腕骨頭には無症状にもかかわらず52%の選手に異常所見を認めました。非投球側と比べその頻度は有意に高く認められました。
所見のパターンはのう胞形成、浮腫形成、骨軟骨欠損の3パターンが見られました。
所見の分布は上腕骨頭の後外側上方部に集中していました。
投球側の肩甲骨には無症状にもかかわらず65%の選手に異常所見を認めました。
非投球側と比べその頻度は有意に高く認められました。
所見のパターンはslant appearance、Bennett lesionの2パターンが見られました。
所見の分布は肩甲骨関節面の後方部に集中していました。
投球側の腱板には無症状にもかかわらず48%の選手に異常所見を認めました。
非投球側と比べその頻度は有意に高く認められました。
所見のパターンは腱板に巣状の高信号域を認めました。
所見の分布は腱板の棘上筋-棘下筋の移行部に集中していました。
投球側の肩峰下滑液包には無症状にもかかわらず、33%の選手に異常所見を認めました。
非投球側と比べその頻度は有意に高く認められました。
所見のパターンは肩峰アーチ下に巣状の高信号域が見られました。
所見の分布は鳥口肩峰靭帯付近と肩峰下後方部に集中していました。
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