ここでは、大学野球選手18名の投球動作中のインナーマッスルの筋活性度をお見せします。
筋活性度という用語は聞きなれないと思いますが、筋電図の%MVCと同様のものだと考えるとイメージしやすいと思います。筋生理学的にいえば、ある筋肉の運動単位の活性している割合を示します。筋活性度は0〜1までの値をとります。たとえば、筋活性度が0.5といった場合は、筋電図でいえば50%MVCを示し、筋生理学的にいえば、全運動単位の50%の筋肉が働いていることをしめします。
筋活性度はSIMM(nac社)を用いて算出しました。算出の概略を下図に示しますが、投球動作をmotion-captureして、逆動力学解析を行い、関節モーメントを算出します。その後、数学的最適化手法を用いて、筋完成度を算出しました。
以降、インナーマッスルのそれぞれの筋活性度のグラフを掲載します。私の集めた筋電図の文献ではパターンなどよく一致しましたが、いかがでしょうか?
大学野球選手18名の投球動作中の棘上筋の筋活性度の平均と標準偏差を示します
筋活性度は
最小が0(筋収縮活動を全くしていない状態)
最大が1(筋収縮活動が最大である状態)
解析区間はfoot contactからball release(REL)後50msecまで。MERは最大外旋時を示します。この解析区間を100%に正規化しています。
コッキング期ではあまり活性しませんが、加速期に最大に活性し、フォロスルー期も結構活性化します。
大学野球選手18名の投球動作中の棘下筋の筋活性度の平均と標準偏差を示します
筋活性度は
最小が0(筋収縮活動を全くしていない状態)
最大が1(筋収縮活動が最大である状態)
解析区間はfoot contactからball release(REL)後50msecまで。MERは最大外旋時を示します。この解析区間を100%に正規化しています。
コッキング期では外旋運動をするときに一度活性します。その後、加速期に最大に活性し、フォロスルー期も結構活性化します。
大学野球選手18名の投球動作中の肩甲下筋の筋活性度の平均と標準偏差を示します
筋活性度は
最小が0(筋収縮活動を全くしていない状態)
最大が1(筋収縮活動が最大である状態)
解析区間はfoot contactからball release(REL)後50msecまで。MERは最大外旋時を示します。この解析区間を100%に正規化しています。
最大外旋位(MER)時付近で最大に活性化します。ここから投球腕を内旋し加速するトルクを生んでいると考えられます。
大学野球選手18名の投球動作中の小円筋の筋活性度の平均と標準偏差を示します
筋活性度は
最小が0(筋収縮活動を全くしていない状態)
最大が1(筋収縮活動が最大である状態)
解析区間はfoot contactからball release(REL)後50msecまで。MERは最大外旋時を示します。この解析区間を100%に正規化しています。
コッキング期では外旋運動をするときに一度活性します。その後、加速期に最大に活性し、フォロスルー期も結構活性化します。
このパターンは棘下筋のパターンに類似します。
上記の4筋のグラフをまとめてみました。
肩の内旋筋群、外転筋群、外旋筋群と役割を分けて考えるとすっきりいくくように思います。はじめに外旋筋群がはたらき、最大外旋に誘導していきます。その後内旋筋群がはたらき肩関節内旋しながら、上腕を加速していきます。フォロスルー期では4筋すべての活性度は高く保たれ、減速しながら遠心力に対抗します。
もし、可能であれば筋電図の文献とこのグラフを対比してみてください。
その相同と相違についてご意見をいただけるとありがたく思います。
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