このシステムでは投球動作から、上腕骨頭病変の存在確率やその分布を予測することを試みました。
まず、投球動作をmotion captureします。
SIMM(nac)の筋骨格モデルを用いた動力学解析を行って肩関節間力を算出します。
その後mechanical finder(RCCM)を用いて有限要素法解析を行い、応力分布をシミュレーションします。
このシステムについて妥当性を検証したところ、シミュレーションされた応力分布と実際のMRI所見の分布は合致し、その的中精度は約80%でした。
病変の有無(存在確率)の予測においては、motion captureした投球動作からSIMM
の筋骨格モデルを用いて肩関節間力を算出し、これとロジスティック回帰モデルを用いて上腕骨頭病変の存在確率を予測します(的中精度は約80%)。
例えば、ある人がこのシステムを用いて投球動作をmotion captureすると
「あなたの投球フォームでこの病変が生じている確率は**%です。」
と表示されます。
病変分布の予測は視覚的に表示します。
上段はこのシステムで予測された病変分布(応力分布)を表しています。
赤いところが応力が高いところです。
一方下段は実際のMRI所見の分布を表しています。
予測された病変分布と実際の病変分布は合致しました。
病変の存在確率や分布が予測されたら次はどうするか?
このシステムでは投球動作をゲーム感覚で、コンピューター上で変更することが可能です。
つまり、motion captureという大変な作業を何度も行わなくてもよいことになります。
変更した投球動作で再度シミュレーションを行うと病変の存在確率や分布が変化します。何度か試行錯誤し、上手にシミュレーション出来たら、選手に現場で実際にTRYしてもらいます。
このシステムはcomputer assisted sports scienceという考え方に基づいて、診断と
治療を同時に行える(dynamic diagnosis & therapy)システムといえると思います。
最終的にシミュレーションされた投球フォームを選手に伝えていかなければなりません。
そのときは、アニメーション(動画)を用いて伝えていきます。
このシステムではシミュレーションされた投球フォームをあらゆる角度から観察することが可能です。
またある一部分を拡大したり、そのときの肩関節内の挙動を観察することも可能です。
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